この記事で学べること
近年、「サルフェートフリー」「シリコーンフリー」「パラベンフリー」など、“○○フリー”を掲げた化粧品が急増しています。「やさしい」「安心」「環境に良い」といった印象を持つ消費者が多い一方で、実は“フリー”に明確な統一されたルールはなく、メーカーごとに基準が異なるのが現状です。
本記事では、処方のプロフェッショナルの視点から、「○○フリー」が持つ本来の意味や、企画段階で決めるべき方針、そして「D5フリー」などの最新トレンドについて詳しく解説します。
目次
- 「○○フリー」とは何を指すのか?基準の現状
- よく除外される成分の例
- キャリーオーバー成分の扱いが重要
- “フリー”を決める前に考えるべき3つの方針タイプ
- 「なぜフリーにするのか」を整理する
- D5フリー・揮発性シリコーンフリーの意義と業界動向
- 環境への影響とEUの配合規制
- 日本での対応と業界の動き
- 進化したフリー設計:「入れない」から「どう設計し直すか」へ
- フリー設計の新しい視点
- 設計思想の転換
- 実務で役立つ!フリー方針を設定するためのチェックポイント
- 開発の方向性を明確にする実務チェックポイント
“○○フリー”や“無添加”とは、特定の成分を意図的に含まない化粧品を指します。
ヘアケア製品においては、以下のような成分を除外するケースが多く見られます。
キャリーオーバー成分とは、原料に含まれる防腐剤などが効能効果に影響しない範囲で微量に最終製品へ残留する場合を指します。化粧品公正取引協議会の規約では、全成分表示に記載義務のない成分について「無添加」と表示することは不当表示とされています。ただし、「配合成分として意図的に添加していない」旨を誤認なく説明することは可能です。
フリー訴求においては、考え方や基準がさまざまであるため、「なぜ除くのか」「どの範囲まで除くのか」を整理し、適切な表現方法を検討することが重要です。
「なぜフリーにするのか」を整理することは、目的やゴールの明確化に欠かせません。同じ“フリー”でも、目的によって意味合いは以下のように異なります。
| 方針タイプ | 設計の方向性 | 目的 |
|---|---|---|
| 敏感肌対応 (機能的フリー) |
キャリーオーバーまで徹底除去 | 「低刺激性の追求」や刺激リスクの低減 |
| コンセプト訴求 (広告的フリー) |
配合成分としての除外 | ブランド・広告上の差別化、消費者への分かりやすさ |
| 環境配慮 (サステナブルフリー) |
環境負荷の少ない成分への切り替え | 持続可能性・素材選定 |
目的を明確にすることで、「どの成分を」「どの程度除くか」が判断しやすくなります。また、広告表示を希望する場合は、原料情報の収集やアレルギーテストの実施など、確認作業に時間を要するケースもあるため、開発スケジュールに影響する可能性があることを考慮した計画立案が重要です。
D5(シクロペンタシロキサン)は、髪の艶・なめらかさ・軽さを実現する揮発性シリコーンの一種です。しかし、EUでは環境への影響(難分解性・生物蓄積性・環境残留性・水生生物への毒性)が懸念され、洗い流し製品での使用が規制されています。
EUでは、2020年のD4(シクロテトラシロキサン)・D5規制が開始され、2026年6月よりD6も「洗い流す製品」での0.1%以上の配合が制限されました。
日本では法的な規制はありませんが、環境意識の高まりから自主的な削減対応が広がっています。さらに、日本化粧品工業連合会は揮発性シリコーンが石油ファンヒーターや電気かみそりの故障の原因となる可能性を公表し、アウトバス製品への配合について注意喚起を行っています。山田製薬でも、環境への高い配慮とグローバル処方への意識から業界ガイドラインを遵守し、非揮発性シリコーンやシリコーンフリー処方の検討に積極的に注力しています。
“○○フリー”は、単なる成分除去ではなく、製品コンセプト全体の再設計として捉えることが重要です。かつての「不使用」という制限から抜け出し、代替素材を活用して品質・環境配慮・心地よい使用感を両立させることが現在の主流です。
| 観点 | 初期の"フリー"アプローチ | 進化した"フリー"設計 |
|---|---|---|
| 目的 | 刺激・リスクの回避 | 品質・環境・使用感の最適化 |
| 設計アプローチ | 入れないことを目的化 | 代替素材で同等機能を再現 |
| 消費者へのメッセージ | 「○○不使用」 | 「安心と心地よさを両立」 |
| 技術的課題 | 単純な成分除去が中心 | 機能性・感触・安全性を維持しながら、品質と環境配慮を両立 |
“フリー対応”は引き算ではなく設計の再構築です。例えば、「シリコーンフリーでもなめらかな指通りを実現するオイルブレンド技術」や、「防腐剤フリーでも安定性を保つ低pH設計や複合保湿系防腐設計」など、“入れない設計”をきっかけに新しい処方価値を生み出す動きが進んでいます。
実際に“フリー”方針を設定する際は、以下の観点を整理することで開発の方向性を明確にできます。
“○○フリー”はメーカーごとの解釈差があるため、自社基準の明確化と背景の理解が必要です。D5フリー・揮発性シリコーンフリーに見られるように、環境配慮と使用感の両立といった新たな技術開発が、EU規制などを背景に促進されています。
化粧品開発の現場では、“入れない”ことよりも“どう設計し直すか”がこれからの課題であり、「ただ抜くだけ」から「どう置き換えるか」へとシフトしています。“フリー対応”は制約ではなく、新しい価値を生み出すチャンスです。なお、“フリー”表示を行う際は、薬機法・景品表示法を遵守し、消費者に誤認を与えない適切な情報提供が求められます。
山田製薬では、フリー設計や成分選定に加え、フリー表示・成分訴求に関するご相談も承っています。処方開発だけでなく、薬事担当とも連携しながら、配合成分の考え方、表示・訴求の方向性、使用感や品質面まで含めて、課題に合わせた製品づくりを一緒に検討いたします。
必要に応じて、ラボ・スタジオで試作品の使用感や処方比較を確認しながら、ブランドコンセプトに合ったフリー設計を具体化することも可能です。
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▶監修:平山真理子(ひらやま・まりこ)
5年以上ヘアケア製品の研究員として商品開発に従事。サロン向けPB企画を経て、現在は山田製薬で化粧品OEM/ODMの製品企画・営業企画を担当。研究開発とマーケティングの知見を活かし、ブランド価値の創造に取り組んでいる。
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